鶴巻温泉元湯陣屋

2019年9月25日

                                       

鶴巻温泉元湯陣屋
代表取締役女将 宮崎知子 様

鶴巻温泉・元湯陣屋はどのようにして週休2.5日/EBITDA率30%/社員平均年収400万円を実現することができたのか

IT活用による生産性向上と業績UPを連動させた老舗施設の成功事例公開

◇業績低迷から陣屋コネクト開発、導入の効果
◇IoT活用による業務改善の成功事例
◇旅館にITを浸透させるポイント

鶴巻温泉元湯陣屋様(以下、陣屋と省略)は神奈川県の鶴巻温泉で旅館を経営されています。サービス内容は、宿泊、レストラン、ウェディング、システム開発・提供であり、将棋や囲碁の大会の場としても提供されています。自社開発した陣屋コネクトにより生産性革命を起こし、10年間で「①社員平均年収400万円」「②18室で売上2億9,000円→5億6,000円」「③人件費率27%削減④客単価9,800円→35,000円」、を達成された驚異の旅館です。本稿では陣屋様がどのようにして従業員の反発なくシステム導入を成功させ、生産性革命を達成されたお伝えいたします。

陣屋コネクト開発の経緯
急に決まった旅館経営

もともと旅館で働くことは考えていらっしゃらなかった宮崎様は旦那様のご両親が経営されていた旅館で現在代表として働かれています。働くことになった理由は、旦那様のお父様の逝去、お母様の体調不良により旦那様へ旅館継承のお願いがあったためだということです。急に決まった話だったとのことで二週間ほどしか時間はなく、また第二子を出産したばかりでしたので体力的にも余裕がない状態でした。もともとはシステム販売をする企業で働かれていた宮崎様はこうして旅館業で働くことになりました。

以前の陣屋様の実態

帰ってみれば驚く状況でした。EBTDAが‐6,000万円、借入金が10億円。顧客情報も属人化しており、旦那様のお母様、以前の女将や各営業担当のみ把握していた状況でした。また、自社HPも簡素なものしかなく、パソコンを操作できるスタッフも一人しかいませんでした。飲料部門に関してはノートで発注管理をしており、経験と勘で食材の仕入れを行っていました。結果、余分に食材を注文することも多々ありました。
人件費管理に関しては100名いるスタッフの管理を手作業で行っていた関係で二週間~三週間集計に時間がかかり、売上に対する人件費率の計算もかなりの時間を要した関係で対策を練ることができませんでした。すべて手作業で管理していた結果、各業務に対する工数が非常にかかっていた状態でした。宿泊金額に関しては稼働率を維持するために金額を下げ9,800円に変更。ただ、稼働を上げた状態にしたところで受け入れ態勢が整っていなかったため、忙しいが利益が残らない状態でした。

経営改革の決意、方針作成

「このままではいけない」、そう考えられた宮崎様は今後の経営革命方針の作成に踏み込みました。それが次の改革です。

  • ①高付加価値・高単価・低稼働率へ方向転換
  • 以前までは稼働率向上のために単価を下げ販売していましたが、忙しいのに利益が残らない状態という悪循環でした。お金が残らなければ企業の存亡にかかわるので、キャッシュが回る仕組みへの転換が必要です。それが「高付加価値・高単価・低稼働率」です。これにより利益が残る仕組みに転換されました。
  • ②ブライダル事業の開始
  • 事業を増やしたい思い、毎月ブライダル関係の予約が安定してあったこともありブライダル事業を始めました。事業を増やすが従業員数は維持するというスタイルは、一人の業務量が増えるため、反対意見が出がちです。そこで、以前働かれていた自動車業界を例にとり、企業側ではなく、従業員のための事業開発であることを伝えました。
    「一輪車よりも二輪車の方が早く走れます。二輪車よりも三輪車の方が、安定感が増します。三車より四輪車の方が安定して高速移動ができます。従って、安定して企業を成長させ、従業員の皆さんを守るために事業を増やす必要があります。どうか協力してください。」従業員の生活のための事業開発をすることで反発を避け事業を開始しました。
  • ③おもてなしの実験場(F1)貴賓室活用
  • こちらも自動車業界である「F1」から参考に考えられた戦略です。F1という過酷なレースを一年間耐え抜くことで人財育成やテクニックなどのビッグデータが集まり、それを量産型である自家用車に落とし込むことで毎年発表している新車の性能が高まことから、旅館でも活用できないかと考えました。そこで貴賓室の活用に踏み切りました。以前まで従業員が百二十名いた理由は、単体タスクで動いていたためです。お客様に訴求力のあるサービスを提供することを考えた結果ここまで増えたそうです。ただ、いずれは従業員数を削減したい思いがあった宮崎様は貴賓室を活用した従業員のマルチタスク化に踏み切りました。貴賓室係を新たに設け、貴賓室を担当するスタッフはすべての業務を実行できると定義し、一人ずつマルチタスクをこなせるスタッフを増やし、一般客室へのサービス向上につながりました。
陣屋コネクト誕生

経営方針が決まったことで、何をするべきか見えてきました。

  • ①情報の見える化
  • いつでも・誰でも・どこでも・どんな機器でも様々な情報を確認できるようにする。
  • ②PDCAサイクルの高速化
  • 月次で管理していた情報を日時管理に変更し、今後の戦略の実施できるようにする。
  • ③情報は持つだけでなく活用させる
  • 得た情報は使わなければ意味がないので、情報を活用する。情報が属人化しないようにする。
  • ④仕事を効率化し、お客様との会話と接点を増やす
  • バックヤード業務を減らし、接客の時間を増やす。お客様に合った接客を実施する。非効率な会議、朝礼、夕礼を減らす。

    するべきことが明確になったものの、従業員に意識改革を促したところで当時入社一か月未満であった宮崎様の立場では反発されることが目に見えていたため、環境を変える基幹システムの導入を決意されました。ただ、利益がない状態で高額なシステム導入は出来ず、当時陣屋様に必要な情報管理が可能なシステムが存在しない状況でした。そこで、自動車業界で学んだことにあった「コア技術は自分で作れ」という学びから旅館の基幹システム「陣屋コネクト」の開発を決意されました。

    陣屋コネクト開発、導入の効果

    陣屋コネクトを開発、導入されたことですべての情報を管理することができ驚く結果となっています。

    〇離職率33%→3%
    〇以前の三分の一の人員で売上二倍
    〇宿泊単価:9,800円→37,000~(平均単価1名50,000円)
    〇EBITDA:-6,000万円→1億8,500万円
    〇人件費率:50%→24%、等

    このような結果につながった理由は業務の自動化、迅速化、効率化にあります。人が管理する必要のないものをシステム代行し従業員の負担を減らします。システム上ですべての情報を管理できるようにすることで誰でも迅速に効率的に顧客対応が可能となり接客の質が高まります。システム同行により授業員の負担が大幅に削減可能となり、従業員はよりきめ細やかな接客に専念することが可能になりました。結果、従業員満足度が向上し、それに伴い顧客満足度の向上にもつながりました。

    このようにして「陣屋コネクト」が誕生し、大幅な経営改革となりました。以前の陣屋様の事例は皆様の施設と共通する箇所あるかと思います。人手不足問題や働き方改革により少ない人材で施設運営をしないといけない施設様もあるかと思います。バックヤードをシステム代行し、接客力を上げた陣屋様の事例を参考にされてはいかがでしょうか。

    IOT活用の旅館経営法
    陣屋様のIoT活用事例

    陣屋様の大切な顧客であるリピーターに対して実施するサービスにより、三度、四度の訪問になると考えた宮崎様はIoTの活用に着目されました。大きくは3つ掲げております。

    • ①誰でも伝説のドアマンに
    • ホテルオークラ東京にいらっしゃった伝説のドアマンを参考に車種ナンバーから顧客を把握でき、一人一人に合ったお出迎えを実施されています。
    • ②お風呂の管理
    • センサーを活用しタオルの枚数を管理、大浴場の温度、水位を管理することで、定期的にお風呂場へ行くことなく必要に応じた対応が可能となりました。
    • ③従業員通しの会話
    • 広い敷地内で情報共有するにはIoTの存在が欠かせません。陣屋様で導入しているシステムではスタッフ間の会話を音声と文字で自動共有が可能となり効率的な情報共有が可能となりました。
    IoTを活用の狙い

    IoT活用の狙いとしては二点ございます。業務効率アップ+お客様満足度アップです。ポイントは自社のためだけのIoT活用ではなく、IoT活用によりスタッフの単純作業から解放し、人にしかできないおもてなしを実施することが可能となることでお客様満足度の向上につなげることです。陣屋様ではシステムで代行可能部分はシステムにし、旅館業ならではのきめ細やかな接客に注力されています。

    旅館にITを浸透させるポイント

    旅館にITを浸透させるためには、いくつか実施しなければならない項目があります。陣屋様が実施され、皆様にも実施可能なものをご紹介いたします。

    • ①経営者(社長・女将)のシステム積極活用
    • 経営陣や上層部がITツールを活用することから始まります。上層部が利用しないものはスタッフが利用しない傾向にあり、かつ現場で働いているスタッフは上層部からのメッセージを欲しており、気にかけていただきたいと感じています。陣屋様の場合はメッセージツールを活用し、上層部から現場のスタッフへ積極的にメッセージを送信されています。

    • ②システムを使う強制的な仕組み作り
    • 最初は活用しないといけない強制的な仕組みが必要です。陣屋様の場合、ログインしなければ給料が発生しない仕組みを実施することで年配の方でも少しずつ操作できるようになり、今となっては誰でも操作可能となっています。

    • ③使いやすいデバイスを自由に選択
    • 重要なのはデバイスを固定せず、使いやすいデバイスを活用することです。陣屋様ではiPadを活用されていますが、陣屋コネクトを導入されている施設様は別会社のスマートフォンを活用されています。従業員にほしいと感じさせ、ストレスなく使いこなせるデバイスが重要になります。

    旅館×IT技術の組み合わせによる生産性革命の事例はいかがでしたでしょうか。業界関係なくIT導入が進む中、皆様の施設ではIT導入進んでいますでしょうか。人手不足において人材獲得ができず人手不足倒産となる宿泊施設も出てくると予測されています。
    IT活用を通じて生産性を向上することで、人手不足を解決、更に利益率の向上につなげる、そんなヒントになればと思います。

コンサルタントコラム

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