須賀谷温泉の再生から始まったホテル事業参入の挑戦
── 大和財託株式会社 代表取締役CEO 藤原正明氏に聞く、地域資産再生と事業成長の秘訣
不動産を軸とした資産価値共創事業を展開する大和財託株式会社。同社が新たにホテル・旅館の開発運営事業へ参入し、滋賀県の「須賀谷温泉」を完全子会社化したことが話題を呼んでいる。代表取締役CEOの藤原正明氏に、事業参入のきっかけや成功の裏側、今後の展望について話を伺った。
「秘湯」との出会いから始まった旅館再生の挑戦
「当社は一棟もののアパート・マンションやビルの開発・再生、設計・施工 、管理・運営を一貫して自社内で担う総合不動産会社です。売上も2024年度には220億円を達成し、2025年度には300億円超を見込んでいます。」
そう語る藤原氏がホテル事業への参入を決めたのは、“魅力ある資産”との出会いがきっかけだった。
「滋賀県長浜市 の須賀谷温泉を訪れた際、地元食材の美味しさや温泉の質に強い感銘を受けました。この地域に眠るポテンシャルを、当社の設計・施工ノウハウで再生し、地域活性化に貢献したいと考え、M&Aに踏み切ったのです。」
須賀谷温泉は、小谷城があった小谷山 の麓に湧き続ける歴史ある温泉で、浅井長政も湯治に通ったとされる。しかし、知名度は決して高くなく、人口減少が進む地域でもある。「だからこそ再生に価値がある」と藤原氏は語る。
苦労したのは「人」と「価格」
事業立ち上げでまず直面した壁は「人財」だった。
「ホテル業界は経験豊富な人が多い一方で、当社の理念や長期的なビジョンに共感してくれる人財を見つけるのは簡単ではありませんでした。妥協せず、当社に合った人財かどうかを見極め、半年以上の期間をかけてようやく採用に至りました。」
また、旅館の再生計画では「ソフト面」から改善を重ねたという。食事、アメニティ、備品の見直しなどを藤原氏自身が現地でチェックし、現場責任者とともに進めた。
「ただ、すぐに価格転嫁ができなかったのが課題でした。安価で先々の予約まで販売していたため、新価格での収益化まで時間がかかりました。」
しかし改善の手ごたえは着実に現れている。2025年3月以降は新価格での販売がスタートし、下期の経常利益は上期の2倍を見込んでいるという。
今後の展開──全国主要都市へ拡大を視野に
今後は須賀谷温泉のリノベーション完了と同時に、ホテル事業全体の拡大に力を注ぐ。
「須賀谷温泉は来年のグランドオープンを目指して準備を進めています。この成功事例を蓄積し、今後の旅館再生に活かしていく予定です。」
また、東京・大阪・名古屋など都市部でのホテル用地獲得も本格化している。
「ホテル・旅館の運営事業 は、全体売上の中では小規模ですが、ストック型で安定的な収益源となるため、戦略的に拡大していきたいと考えています。」
地方創生と企業成長、その両輪を回す挑戦
不動産開発のノウハウと現場主義、そして「地域資産を再生する」という強い想いが、ホテル事業の成功を支えている。大和財託の挑戦は、単なる事業拡大にとどまらず、地域活性化の未来をも担っている。
「今後も、事業と地域の“共創”を実現していきたいですね。」と語る藤原氏の眼差しの奥には強い意志を感じた。
須賀谷温泉HP
https://www.sugatani.co.jp/
大和財託HP
https://yamatozaitaku.com/
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