株式会社いせん

2019年9月25日

                                       

株式会社いせん
代表取締役 井口智裕 様

「株式会社いせん」はどのようにして、予約の取れない人気宿泊施設となり、地域と共に歩む旅館経営が実現できているのか

宿泊特化型旅館HATAGO井仙「雪国観光圏」構想が実現する旅館の未来図とは

◇旅館の昔ながらの慣例からの脱却
◇HATAGO井仙流リピーター戦略
◇『雪国観光圏』としての地域共生と地域集客

株式会社いせん様が経営されているHATAGO井仙様(以下、井仙様と省略)は越後湯沢駅から徒歩一分という立地で経営されています。代表取締役の井口様は、地域活性と宿泊施設は結びついていると述べています。本稿では、真に地域と共存した宿泊施設経営法をお伝えいたします。

旅館の昔ながらの慣例からの脱却

旅館は日本の伝統的な宿泊施設であり、長年多くの方が利用されていますが、旅館では当たり前である部屋食、布団しき、接待による細やかなサービスははたして現在の顧客のニーズに合っているのか、と井口様はおっしゃいます。そこで越後湯沢を訪れる観光客に向けてアンケートを取ったところ、「伝統的旅館経営法の一部は顧客の求めているニーズとは一致していない」ことが判明し、アンケートの結果をもとに顧客のニーズに沿ったサービスを提供することを決断されました。今となっては当たり前である客室にベッドを設置、泊食分離を実施するなど、ホテルのような機能性も兼ね備えた旅館を経営されています。上記のように、顧客のニーズに徹底して答えることにより、利用客の満足度は高まり、何度も利用されている方が多くいらっしゃいます。旅館の昔ながらの慣例の中で、顧客にとっての旅館の”不”、を取り除くことで、旅館の良さを残しつつ顧客のニーズに合った旅館経営が可能となりました。

HATAGO井仙流リピーター戦略

井仙様のリピーター戦略はズバリ、「いくつかある顧客との接点」を大切にすることです。一度目に宿泊利用として井仙様をご利用いただいているお客様のほとんどは、以前同施設内にあるカフェを利用された方々です。従って、越後湯沢に観光に来た利用者がリピーターとして利用する際に同館を選択したという流れになります。そのため、カフェ利用から宿泊利用へと顧客を誘導させることが大変重要な宿泊利用へ促す戦略となります。ここまでは同施設内にカフェのない方は難しい戦略かもしれませんが、井仙様を利用されている顧客の多くは2度3度と宿泊利用をされている方もいらっしゃいます。なぜそれが実現できているかというと、宿泊利用をする中でいくつかある「顧客との接点」を大切にしているためです。井仙様を利用する顧客の流れは以下の通りです。

最終的なゴールである「ファン=リピーター」になっていただくために、①夕食、②朝食、③チェックアウト(売店・カフェ利用を含む)の3つの顧客との接点の場でファンになっていただけるためのアプローチを実施することがポイントです。井仙様では接点の中でも特に顧客に沿ったone to oneマーケティングを実施しています。最初の接点である夕食の際に接客したスタッフがお客様情報を共有し、次の接点である朝食の際に得た情報を元に接客を行うことで、「顧客に覚えていただいている」という心理状態にさせます。その次に、朝食で得た情報をチェックアウトの際や売店、カフェを利用した際に再度活用し、顧客との接点の質をより高めていきます。上記を実践することで結果、顧客満足度は向上し、「ファン化」につながります。旅館は他のサービス業以上に顧客との接点数は多いため、顧客との接点の場を活かし「ファン化」につなげるには最適な産業です。皆様も、従業員通しの連携、情報共有を強化し、お客様一人一人に合った接客を実施し、顧客の「ファン化」を目指してみてはいかがでしょうか。

『雪国観光圏』としての地域共生と地域集客
◇顧客の力に対する心理の変化

井口様は前提として、宿泊施設の売上向上=地域活性化が前提として述べています。日本人観光客の減少、訪日外国人の増加など日本の観光形態が著しく変化する中、今後観光客の日本へ旅行する目的は、その地域にしかない食べ物や、地域にしかできない体験を求めて旅行する人が増えると述べています。いわゆる体験型旅行を求めており、宿泊施設へ泊るために旅行するのではありません。従って、地域の需要=宿泊施設の売上向上になるのです。そのことにいち早く気付いた井口様は越後湯沢駅の利用者が増えるほど井仙様の売上向上につながる、と考え地域活性化に着目されました。

◇地域を引っ張るリーダーの重要性

地域活性化のカギは①進むべき方向性を決めること、②地域を引っ張るリーダー、が必要とおっしゃっています。①に関しましては、『雪国観光圏』という雪国の100年後を見据えたブランドづくりを軸に町づくりを実施されています。これにより、まちづくりにおいて方向性がぶれずに、間違った施策をすることがなくなります。②に関しましては、雪国観光圏や他の地域にも共通点でありますが、地域にあるトップの宿泊施設やレストランなどがまちづくりのリーダーとなるケースが多くあります。さらに、そのトップの企業数社(雪国観光圏や他の地域では3社~5社ほど)がまちづくりにおいて同じ哲学を持っていることが非常に重要になります。地域にあるすべての企業にまちづくりの参画をお願いしたところで同意には非常に時間がかかることが考えられるため、同じ志を持つ数社でまちづくりを実施した方がはるかに進捗はスムーズにいくことが考えられます。

◇ブランド作成の方程式

 井口様が考えるブランド作成において必要なことは、ストーリー性×品質であると述べており、特にストーリー性がなければ地域のブランド作成は難しくなります。ストーリーに関しては、その地で体験できることを顧客が地名を聞いただけでイメージできるほどの強いストーリー性が必要であると述べています。例えば、”ハワイ”と聞く①南国②海、レジャー③おいしい海鮮④南国の音楽を聴いてリラックス、のように地域名を聞くだけでその地で体験できること、体験したいことが頭の中で瞬時にイメージできると思います。人によってイメージは異なるかと思いますが、顧客がイメージできるほどの『ストーリー性』が地域のブランド作成においては重要になります。

◇ストーリー作成方法

ストーリー作成の段階で大切なのは、地域に合ったストーリーの軸をつくることです。雪国観光圏の場合、他の雪の降る地域にはない、歴史的に雪と共存し、雪で育まれた知恵を活かして生活してきた独自の文化がありました。そこで、独自の文化であり、地域に合った「雪と共存してきた雪国文化」をブランド作成の軸に設定することになりました。
上記の軸を作成することにより、雪国観光圏のコンテンツがすべて結びつくことが可能になり、地域ブランドの強化につながりました。新潟には多くの有名な産物がありますが、今までは結びつきがなく、個として販売していました。そのため、雪国観光圏とは言いますが、統一感がない状態でした。「雪と共存してきた雪国文化」という軸ができたことにより、軸があるからこそあるコンテンツと定義することができ、各地域の観光資源がまとまったストーリーを作成することになりました。以前の雪国観光圏は、すべてのコンテンツに統一感がなく、孤立している状態でしたが、すべてがつながり、更に各コンテンツの付加価値が高まり、強い地域のブランドが可能となりました。

コンサルタントコラム

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