ゴルフ場の自社予約比率を20%から40〜50%へ ― ポータル依存から抜け出す「自社予約最大化」の実践ポイント

  • フィットネスゴルフ
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執筆者石場 貴大
コラムテーマゴルフ,webマーケティング,集客
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はじめに:なぜ今「自社予約比率」なのか

「来場者数はそこそこ確保できている。でも、利益が年々残らなくなっている」。全国のゴルフ場経営者の方とお話しすると、こうした声を本当によく耳にします。その背景にあるのが、楽天GORAやGDOといったゴルフ場予約ポータルサイトへの高い依存です。

ゴルフ業界は今、構造的な転換点にいます。ゴルフ人口の中心だった団塊の世代が75歳以上となり、プレーから離れていく、いわいわゆる「2025年問題」が現実のものになりました。日本ゴルフ場経営者協会の集計では、2025年3月度の全国ゴルフ場利用者数は680万人で、ピークだった2023年3月度(718.5万人)から2年続けて減少しています。一方でゴルフ場の数は大きく減っておらず、限られたゴルファーを奪い合う競争は今後さらに激しくなります。

この環境で「ポータルに枠を出して待つ」だけの集客を続けると、手数料と値下げ競争で利益が削られ続けることになります。だからこそ今、自社予約比率を高め、自社で顧客を集め、自社で顧客を囲い込む仕組みをつくることが、ゴルフ場経営の最重要テーマになっているのです。

ポータル依存が招く4つのリスク

ポータルサイトは新規客を集めるうえで非常に強力なツールです。しかし、予約の大半をポータルに頼る状態が続くと、次のようなリスクが積み重なっていきます。

● 手数料による利益率の低下:予約1件ごとに送客手数料がかかり、来場者が増えても利益が増えにくい
● 価格競争と単価の下落:同じエリアのコースが一覧で並ぶため、「安さ」で比較されやすい
● ポータル運営会社との交渉力の低下:依存度が高いほど、掲載条件や施策の主導権を握られる
● 顧客データが自社に蓄積されない:誰が、いつ、何回来たのかが自社の資産にならない

さらに見落とされがちなのが外部環境リスクです。システム障害やセキュリティ上の問題でポータルサイトが一時的に公開停止になれば、その間の予約はほぼ止まってしまいます。集客経路を1つに頼ることは、経営そのものを他社のシステムに預けている状態だといえます。

ポータルは「パンフレット」と位置づける

ここで誤解していただきたくないのは、「ポータルをやめましょう」という話ではないことです。船井総研がおすすめしているのは、ポータルの役割を再定義することです。

成功しているゴルフ場では、ポータルサイトを新規客に初めて来てもらうための「パンフレット」として
位置づけています。
1. ポータルで新規客を集める(まず一度来てもらう)
2. 来場体験で自社のファンにする(プレー・接客・食事で満足してもらう)
3. リピーターは自社予約へ誘導する(2回目以降は手数料のかからない自社HPで予約してもらう)

この流れを意図的に設計できているかどうかが、自社予約比率の差になって表れます。

成功事例:自社予約比率20%→40〜50%、売上7.7億円→9億円

実際にこの考え方で成果を上げたのが、ホウライ様の事例です。

項目 取り組み前 取り組み後
来場者数 5万人/年 6.5万人/年(+30%)
売上 7.7億円 9億円
自社予約比率 20% 40〜50%
ポータル比率 80% 50〜60%

ポイントは、ポータル経由の予約を無理に減らしたのではなく、集客チャネルを多角化し、全体の来場者を増やしながら自社予約の割合を伸ばしたことです。Web広告、Instagram、YouTube、インフルエンサー、TVや大会での露出など、あらゆる経路から公式HPへ人を集め、そこで予約を取り切る仕組みを整えました。

自社予約を最大化する5つのポイント

① 迷わず予約できるHP導線設計

広告やSNSでせっかくHPに人を集めても、HPが予約しにくければ意味がありません。自社HPでよくある失敗が、独自性を重視した「おしゃれなデザイン」です。制作会社はデザインと構築のプロですが、ゴルフ場マーケティングのプロではないことが多いのです。成果が出るのは、ユーザーが使い慣れた一般的なフォーマットに沿ったHPです。

具体的には次の点を押さえます。
● 一目でターゲットと施設の特徴が伝わるファーストビュー
● スマホファーストで、スクロール中も予約ボタン・LINE登録が常に表示される
● TOP → コース紹介 → 予約の3クリック以内で予約まで到達できる導線
● 「誰のために・どんなサービスを・いくらで・どうやって予約するか」を明確にした、顧客心理に沿ったページ構成

② Web広告で「コースを探している人」を自社HPへ直接集客

一度、自社のゴルフ場名で検索してみてください。一番上に表示されるのは、公式HPでしょうか、それともポータルサイトでしょうか。指名検索ですらポータルに流れているケースは少なくありません。

リスティング広告やバナー広告を活用し、ゴルフ場を探しているユーザーを自社HPへ直接呼び込みます。成果を出すコツはペルソナ別の配信です。「ゴルフ好きの若い男性」といった漠然とした設定ではなく、「35歳・会社員・スコア90台を目指し、ドライバーの精度に課題を感じている」というレベルまで具体化します。そのうえで、
● 上級者にはコースの戦略性
● 初級者には雰囲気や食事
● 利便性重視の方にはアクセスの良さ
と、客層ごとに訴求とキーワードを分けて配信し、配信計画→運用→効果測定→改善のPDCAを回し続けます。

③ 自社HPが最安値の「ベストレート保証」

ゴルファーは予約の前に複数サイトを比較するのが当たり前になっています。そこで有効なのが、公式HPからの予約が最もお得であることを明確に打ち出す「ベストレート保証」です。

この動きは大手でも本格化しています。PGMとアコーディア・ゴルフは2026年2月、公式サイト・公式アプリからの予約を常に最安値とする「ジカドリ」を打ち出し、他社予約サイトの同条件プランより原則として平日500円、土日祝1,000円安い料金体系を導入しました。キャンセル枠や限定プランも公式サイトで先に出すとしています。

ポータル手数料を考えれば、多少の値引きをしても自社予約の方が利益は残ります。「公式が一番お得」という認知をつくることは、中小規模のゴルフ場こそ取り組むべき施策です。

④ ポータルへの予約枠の出稿タイミングをコントロールする

すべての枠を最初からポータルに出していないでしょうか。まず自社HP・会員向けに先行して枠を公開し、埋まりにくい日や時間帯をポータルで補完する、といった出稿タイミングの戦略を持つことで、自然と自社予約の比率は高まります。ポータルは「すべてを任せる場所」ではなく、「空き枠を埋めるための調整弁」として使い分けるのがポイントです。

⑤ 来場者をメール会員化し、次回予約は自社へ誘導する

自社予約比率を高めるうえで最も効果が大きいのが、来場時に顧客情報を取得し、次回以降の予約を自社に誘導する仕組みです。

ホウライ様では次の3ステップを地道に続けました。

  1. ポイントカードで顧客をデータベース化:来場したビジターにカードを発行し、メールアドレスを取得
  2. チェックイン時のスタッフの声かけ:未登録のお客様に「会員限定のお得な情報をメールでお届けします」とお伝えする
  3. 約3万人の会員へ定期配信:お得な情報やプランを継続的に配信し、次回予約を手数料のかからない自社Webへ

来場時こそが会員化の最大のチャンスです。メールに加え、開封率や即時性の高い公式LINEを接点にするゴルフ場も増えています。自社の顧客名簿を育てることが、自社予約比率を押し上げる一番の近道です。

効果検証とAI時代の検索対策(AIO・LLMO)

HPは「作って終わり」ではありません。Googleアナリティクスなどを使って定期的に検証し、改善を続けることが欠かせません。
● アクセス分析:スクロール率やエンゲージメント率、平均滞在時間から、どこで離脱しているかを把握する
● エリア分析:どの市町村のユーザーが関心を示しているかを把握し、狙うエリアへの広告配信を強化する
● 流入経路分析:自然検索・SNS・被リンク・直接アクセスなど、反応の良い経路を見極めて強化する

さらに今後は、生成AIへの対策も必須になります。ゴルファーが「〇〇エリアで初心者におすすめのゴルフ場は?」とAIに質問し、その回答をもとにコースを選ぶ時代が来ています。日本の生成AI利用率は1年で2倍以上に伸び、約6割に達したとされ、Instagramやキャッシュレス決済と同程度の普及度になりつつあります。

これからは「検索で上位に出ること」に加えて、「AIに自社サイトが引用されること」が重要になります。そのためのLLMO(大規模言語モデル最適化)の基本は次のとおりです。
● SEOで上位表示されていること(引き続き有利に働く)
● サイト内の情報(料金・営業日・プランなど)を常に最新に保つ
● Q&A形式など、AIが理解しやすい文章構成にする
● AIが読み取れる構造化データを設置する
● 情報の引用元を明記する

SNSは「一瞬のバズ」ではなく「常連化」のために使う

集客チャネルの多角化では、SNSの活用も大きな武器になります。ホウライ様では、Instagramのリール動画で10日間の総再生数180万回を記録し、再生から予約への転換率は約0.5%でした。1人乗りGカートの動画や、所属プロ・研修生、実際の会員ご夫婦が出演する動画が大きく伸び、広告として投下することで狙ったタイミングでの露出も高めました。

YouTubeでは、ゴルフ系チャンネル約40チャンネルに直接打診し、約8チャンネルの撮影・来場が決まりました。「撮影場所や企画に悩んでいる」というチャンネル側の課題に着目し、プレー代の優遇などで低コストに誘致したのがポイントです。

ただし、よくある失敗はSNSで一瞬だけ話題になって終わることです。成功するゴルフ場は、SNSで生まれた認知を公式HPへの予約、そしてメール・LINE会員化へとつなげ、常連化させています。
SNSもまた、自社予約の流れの入口として設計することが大切です。

まとめ:「知っている」と「できる」は違う

自社予約比率を高めるための考え方は、整理すると次の2点に集約されます。

  1. 新規集客を最大化する:ポータルに依存しないWebマーケティング(Google広告、HP設計、ポータル戦略)
  2. リピートを最大化する:次回予約を自社予約につなげる仕組み(会員化、CRM・LINEを活用したマーケティングの自動化)

ここまで読んで「どれも聞いたことがある」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「知っている」と「できる」はまったく別物です。成果を出しているゴルフ場に共通しているのは、施策を「3ヶ月」と期限を決めてやり切っていることです。

人口動態の変化や団塊の世代の引退といった構造的な課題に飲み込まれる前に、今こそ手を打つべきタイミングです。

船井総研では、ゴルフ場に特化したデジタルマーケティングコンサルティングとして、現状分析と戦略立案から、毎月の定期Web会議による実行支援、そして最終的には自社内でPDCAを回せる体制づくりとWeb担当者の育成まで伴走しています。人手不足で担当者を置けない、何から手をつければよいかわからない、という段階からでもご相談いただけます。まずは、自社のゴルフ場名で検索したときに何が一番上に表示されるか、確認するところから始めてみてください。

執筆者 : 石場 貴大

船井総合研究所に入社以来、フィットネス業、ゴルフ練習場業、宿泊業のコンサルティングに従事している。Web広告やSNSを活用したマーケティングに取り組んでおり、精度の高い分析で市場のニーズを的確に捉え、商品やプランの設計から最適化までを手掛けて集客支援を行っている。 日々、経営者に寄り添いながら伴走することをモットーに、コンサルティングに努めている。