過当競争エリアで来場者130%|値下げに頼 らないゴルフ場集客

  • フィットネスゴルフ
公開日
更新日
執筆者石場 貴大
コラムテーマ集客
SHARE

ゴルフ場業界で進む「二極化」

現在、ゴルフ場業界では勝ち組と負け組がはっきり分かれる「二極化」が急速に進んでいます。ゴルフ参加率は7.4%から4.8%まで低下し、メインのプレーヤーである団塊の世代の引退(2030年問題)も目前に迫っています。

経営者の皆様の中にも、次のようなお悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

  • 集客に苦戦し、来場者数の減少に歯止めがかからない
  • 来場者数は昨対並みだが、コスト増や単価の低下で利益が残らない
  • キャディ不足が深刻化しているが、有効な対策が打てていない
  • SNSやWEBを活用したいが、何から始めればよいか分からない

本コラムでは、こうした課題を乗り越え、過当競争エリアで来場者130%を実現したあるゴルフ場の取り組みをご紹介します。

「安売り」と「ポータル依存」はいずれ限界を迎える

過当競争エリアでは、ポータルサイトへの掲載と値下げで来場者を確保するゴルフ場が少なくありません。しかし、この方法を続ける限り、いずれ限界が訪れます。
ポータルサイトへの依存度が高まると、次のようなリスクが生まれます。

  • 支払い手数料がかさみ、利益率が下がる
  • 価格競争に巻き込まれ、単価が下落する
  •  ポータルサイト運営会社との交渉力が弱まる
  •  自社に顧客データが蓄積されない

大手チェーンが低価格とコスト削減を武器にシェアを広げる中、同じ土俵で値下げ合戦をしても勝ち目は薄いのが現実です。必要なのは、価格競争から抜け出し、お客様にとっての「来場理由」を増やす経営への転換です。

事例:地方の激戦区で来場者130%を達成したゴルフ場

値下げに頼らず業績を伸ばしたのが、関東近郊の地方エリアにあるAゴルフ場です。
Aゴルフ場は首都圏から離れた立地にあり、周辺は人口当たりのゴルフ場数が全国トップクラスという激戦区です。その厳しい環境の中で、コロナ禍に5万人台まで落ち込んだ年間来場者を6.5万人まで引き上げました。営業収益も中期計画の目標を達成し、9億円超を記録しています。

 指標

取り組み前(コロナ期)           

現在

年間来場者数

約5万人 

約6.5万人

売上

約7.7億円

9億円超

自社予約比率

約20%

約40〜50%

Aゴルフ場は「小投資→中投資→大投資」の3段階で施策を積み上げてきました。ここからは、その中でも他のゴルフ場がすぐに参考にできる4つの取り組みをご紹介します。

取り組み① コストを削らず、コース品質で「選ばれる理由」をつくる

業績が苦しいとき、真っ先に削られがちなのがコースメンテナンス費です。Aゴルフ場はその逆を選び、年間数千万円規模のグリーンメンテナンス費を維持し続けました。
フェアウェイの芝質や、起伏に富んだ戦略性の高いグリーンを高い水準で保つことで、プレーヤーが「違い」を体感できるコースづくりを徹底しています。
値下げではなく品質にお金をかけることで、単価を守りながら来場理由をつくる。これが集客改善の土台になっています。

取り組み② SNS・YouTubeで認知を一気に広げる

首都圏から遠い立地のハンデを補ったのが、SNSと動画による認知拡大です。

Instagramのショート動画で180万回再生

15〜30秒のリール動画を活用し、10日間で総再生数180万回を記録しました。1人乗りカートの動画は30万回・60万回超のヒットとなり、実際の会員ご夫婦が出演した動画は160万回再生を突破しています。自社のプロや会員といった「身近な出演者」が親近感を生み、再生から予約への転換率は約0.5%に達しました。ヒットした動画には広告費を投下し、狙ったタイミングで露出を高めています。

ゴルフ系YouTuberを低コストで誘致

ゴルフ系YouTubeチャンネル約40chに直接打診し、約8chの撮影・来場につなげました。ポイントは、チャンネル側が抱える「撮影場所や企画が足りない」という悩みに着目し、プレー代の優遇などで撮影を呼びかけたことです。プロの公式戦の会場に選ばれた際には、出場選手の練習ラウンド企画を提案するなど、話題性のある機会も活かしています。
大切なのは、SNSで一瞬だけ話題になって終わらせないことです。拡散で得た認知を、次に紹介する顧客管理の仕組みにつなげ、常連化させることで初めて成果が積み上がります。

取り組み③ CRMで自社WEB予約比率を倍増させる

Aゴルフ場は、ポータルサイトを「新規のお客様に初めて来ていただくためのパンフレット」と位置づけ直しました。初回はポータル経由でも、2回目以降は手数料のかからない自社予約へ誘導する。この流れをつくったのがCRM(顧客管理)の活用です。

  1. ポイントカードで顧客を組織化:来場したお客様にポイントカードを発行し、メールアドレスを取得して名簿化します。
  2. チェックイン時の声かけを徹底:未登録のお客様には、スタッフが「会員限定のお得な情報をメールでお届けします」と案内し、地道に登録を増やします。
  3. 予約開始時に先回りして案内:約3万人に育ったメール会員へ、予約枠の公開に合わせて優先的に案内します(タイムライン戦略)。LINEも組み合わせ、早期の予約を自社WEBへ呼び込みます。

その結果、自社予約比率は約20%から40〜50%へと倍増しました。手数料の削減で利益率が改善するだけでなく、リピート率の向上にもつながっています。
あわせて、自社ホームページは「3クリック以内で予約できる導線」「スマホで常に予約ボタンが見える設計」など、使い慣れた形式で迷わず予約できることを重視するのがポイントです。

取り組み④ 1人乗りカートの導入で、付加価値と人手不足解消を両立

大きな投資判断として、Aゴルフ場は1人乗りカートを大規模に導入しました。この一手は、集客・収益・人手不足の3つの課題に同時に効いています。

  • プレー時間の短縮と組数増:フェアウェイに乗り入れ、自分のボールの横まで直接移動できるため、プレー時間が短くなりました。これにより1日あたりプラス10組の受け入れを実現しています。
  • 高付加価値化:新しいプレー体験として、通常のカートより高い料金設定が可能になりました。SNSで話題になったことで、新規客の呼び水にもなっています。
  • キャディ不足への対策:距離測定やクラブ運搬をカートが担うため、深刻なキャディ不足をカバーできます。高機能ナビとGPSによる走行制限で、安全面も確保しています。

お客様の体験価値と運営効率を同時に高める投資であり、単なる設備更新にとどまらない点が特長です。

まとめ:価格ではなく「来場理由」で選ばれるゴルフ場へ

Aゴルフ場の事例が示しているのは、立地や競合環境が厳しくても、値下げに頼らず業績を伸ばせるということです。

  • コース品質にこだわり、「選ばれる理由」をつくる
  • SNS・YouTubeで、これまで接点のなかった層に認知を広げる
  • CRMで来場者を会員化し、次回予約を自社WEBへ誘導する
  • 設備投資で体験価値と運営効率を同時に高める

いずれも一度にすべてを行う必要はありません。Aゴルフ場も、コストのかからない現場の施策から始め、売上基盤が整ってから大きな投資へと段階的に進めてきました。

まずは「来場時のメール会員登録」や「ショート動画の発信」など、明日から始められる小さな一歩から取り組んでみてはいかがでしょうか。団塊の世代の引退をはじめとする構造的な変化が本格化する前に、価格競争から抜け出す準備を進めることが、5年後も選ばれ続けるゴルフ場への近道です。

執筆者 : 石場 貴大

船井総合研究所に入社以来、フィットネス業、ゴルフ練習場業、宿泊業のコンサルティングに従事している。Web広告やSNSを活用したマーケティングに取り組んでおり、精度の高い分析で市場のニーズを的確に捉え、商品やプランの設計から最適化までを手掛けて集客支援を行っている。 日々、経営者に寄り添いながら伴走することをモットーに、コンサルティングに努めている。