はじめに
近年、弊社には「新たに体操教室を始めたい」「体操教室のフランチャイズ展開が広がるなか、事業として興味がある」といったお問い合わせが増えている。
一方で、体操教室だけで売上が成立するのか、どの程度の施設や設備が必要なのか、指導者を確保できるのかなど、運営面に不安を持つ企業も少なくない。
そこで今回は、実際に大阪で3施設の体操教室を運営する大阪体操クラブに、施設や設備、集客、人材採用、安全管理、今後の店舗展開について話を伺った。
大阪体操クラブについて
大阪体操クラブは、大阪府内で子ども向けの体操教室とスポーツ学園を運営している。2階建ての施設には、鉄棒、跳び箱、マットをはじめ、ピットや専門種目の器具を完備。小学生の会員約300名、スポーツ学園の会員約100名が在籍している。
同クラブが運営するスポーツ学園では、送迎と18時までの預かりに対応し、預かり時間中には体操やサッカーなどの特別活動も実施している。
取材対象者:大阪体操クラブ 林 啓明 様
役職:代表取締役
HP:https://spec-ogc.com/
「体操教室に必要な施設と設備」
林氏は、体操教室について「鉄棒、跳び箱、マットがあれば、正直どこでもできる」と考えている。
実際、高槻で運営していた比較的シンプルな施設でも、多い時期には約300名の会員が在籍していた。この経験から、対象年齢や指導内容を明確にすれば、小規模な施設でも体操教室を運営できる可能性があることが分かる。
一方、難易度の高い技術を指導する場合は、専門設備と指導者のスキルが必要になる。教室の価値を決めるのは施設や器具だけではなく、指導内容や安全性を確保するための運営体制も重要である。
現在の大阪体操クラブは2階建てで、ピットや専門種目の器具を備えている。基礎的な運動から専門的な技術まで、会員の成長に合わせて指導できることが強みとなっている。
「体操教室の収益性と施設活用」
体操教室への参入を検討する企業からは、「体操教室だけで売上が成立するのか」という質問を受けることが多い。
既存の商業施設やテナントに出店する形式であれば、一定数の会員を集めることで売上をつくることも可能だと考えられる。一方、自社で施設を保有する場合は、家賃や空調、駐車場、施設管理などの負担が発生するため、施設が稼働しにくい時間帯の活用が重要になる。
大阪体操クラブでは、平日の時間帯に約100名が在籍するスポーツ学園を運営している。送迎や18時までの預かりに加え、体操やサッカーなどの活動を提供しており、共働き家庭を中心に高いニーズがある。
金曜日には回数券制の親子体操も実施している。大きな売上を目的とするのではなく、保護者とクラブの接点をつくり、スポーツ学園への入学にもつなげている。
このように、自社施設で体操教室を運営する場合は、曜日や時間帯ごとの稼働状況を踏ま
え、施設全体を活用することが事業を安定させるポイントとなる。
「SNSによる集客と会員の定着」
大阪体操クラブでは、現在の集客の7割程度をSNS広告が占めている。特に反響が大きいのは小学校低学年の家庭で、年度の変わり目や長期休暇に合わせて短期講習の広告を出している。
同クラブには小学生の会員が約300名在籍し、そのうち低学年が約150名を占めている。入会時の反響は低学年が大きい一方、高学年になるほど定着率が高まる傾向がある。
技術レベルが上がるにつれてできることが増え、子ども自身が上達を実感できることが継続につながっている。低学年で入会した子どものうち、高学年まで継続する割合は半数程度で、継続年数は約3年が一つの目安となっている。
教室へ通う頻度は週1回が約6割、週2〜3回が約4割で、近年は共働き家庭の増加に伴い、週1回の会員が増えている。土曜日の人気が高い一方、平日にはまだ受け入れの余力があり、平日の集客が今後の課題となっている。
「人材採用・育成と安全管理」
大阪体操クラブでは、社員4名とアルバイト約20名で教室を運営している。以前は毎年10〜20件程度の応募があったが、コロナ禍以降は大きく減少し、アルバイトから社員になるケースも少なくなっている。
社員採用では求人媒体や大学の体操部などに働きかけ、アルバイトはクラブの卒業生などから採用している。物件の紹介を受けることもあるが、教室を任せられる人材がいないため出店を見送っている。
採用では、体操経験以上に「子どもが好きかどうか」を重視している。新人は先輩と一緒に現場へ入り、実際の指導を見ながら仕事を覚えていく。担当人数は、幼児コースで指導者1名につき約10名、小学生では10名強が目安となる。
安全管理では、不定期ながら補助技術の研修を実施している。怪我や体調の変化があった場合は速やかに保護者へ連絡し、送迎バスの利用などで普段は顔を合わせない保護者とも信頼関係を築くことを大切にしている。
「今後の店舗展開」
大阪体操クラブでは、集会所や空きテナントなど、比較的小規模な場所を活用した教室展開も検討している。
基本的な器具と安全に指導できる環境があれば、小規模な施設でも体操教室の運営は可能である。一方、現在の店舗展開における最大の課題は人材の確保であり、良い物件があっても教室を任せられる指導者がいなければ出店はできない。
総括
体操教室は、比較的小規模な施設でも始められる事業である一方、安定した運営には指導者の採用・育成と安全管理が欠かせない。
新規参入を検討する際は、会員獲得だけでなく、施設の空き時間を活用した収益設計と、子どもや保護者に長く支持される運営体制を構築することが重要である。




